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アリス・ミラーと乳児期の心的外傷

アリス・ミラーはポーランドに生まれ育ち、スイスに移住した心理学者です。心理学者として活動する前には精神分析家として長期の臨床経験があり、その経験を元として人は乳幼児期から心的外傷(トラウマ)を負うと理解するようになりました。精神分析学者ジークムント・フロイトが発見した、幼少期の経験を元とする無意識の作用について高く評価しています。しかし一方で、異性の親に対する性的な思慕と同性の親に対する敵意を子供が無意識に抱えているなどという「エディプスコンプレックス」については、厳しく批判しています。フロイト自身が、エビデンスに基づいた性虐待を原因とするヒステリー症状を否定して、子供が大人を性的に誘惑すると理論化したからです。

また、彼女は「闇教育」という言葉で説明していますが、かつてのドイツでは虐待に相当するような養育が、幼少期から当たり前に行なわれていたと解明しました。その結果、ヒトラーのような独裁者が誕生し、人種差別による大量虐殺に繋がったと判断しています。ヒトラーも被虐待児であったと検証し、親から受けた心的外傷が無意識の原動力となったと分析しています。

実は、私は拙著「ちゅーしても、いいよ 親の支配から生還した真由美の記録」執筆中にはアリス・ミラーについての知識がありませんでした。私の経験によって、幼児期以降だけではなく乳児期の情緒的な虐待も、境界性パーソナリティ障害や解離性同一性障害の下地になっていると感じていたのですが、アリス・ミラーの著作「魂の殺人」と「禁じられた知」を読んで、同等の考えが理論化されていると知りました。

一般的に乳児が記憶を持っているわけがないと考えがちですが、それは間違いです。その頃の体験は記憶として取り出せないだけで、無意識として擦り込まれています。その無意識がその人の人生を支配するといっても過言ではありません。それほど乳児期は重要な養育期間なのです。こうした考えは徐々に広がっていますが、これから子育てをするであろう若い方々には特に理解して頂きたいと思います。

   
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2015-06-15 : 解離性同一性障害/解離性同一症/多重人格(DID) : コメント : 8 :
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Re: No title
コメント追加有り難うございます。
フロイトが自説を撤回していなければ、もっと早い時期に性虐待の認識が広がったかもしれませんね。「幼児性欲」などという屁理屈がまかり通ってしまったのが不思議でなりません。私はアリス・ミラーの考えがもっと広がるように願っています。
2015-06-18 06:11 : 清水賢一 URL : 編集
No title
先日のコメントに追加します。
精神分析の世界では、長い間衝動理論により、患者が性被害を訴えても、それは事実ではなく患者の性的ファンタジーだとされてきました。
アリス・ミラーは当初衝動理論を信じていましたが、臨床家として患者に接するうちに疑問を抱くようになり、幼児性欲などというものはなく、患者の訴える性虐待は事実だと思うようになったのです。
2015-06-17 09:06 : URL : 編集
Re: No title
そうですか。ご教示有り難うございます。「誘惑」や「衝動」という言葉と理論について、私は正しく理解していないわけですね。フロイトについてはきちんと勉強していないので、今後学んでいこうと思います。また、間違いなどがありましたらご指摘ください。宜しくお願いいたします。
2015-06-16 20:43 : 清水賢一 URL : 編集
Re: Re: 「抱きぐせ」について
なるほど、そういう視点もありそうですね。私も発達障害は先天的な要因だけではない気がしています。根拠はないのですが。

ただ、発達障害という概念自体があやふやですよね。精神科医の岡田尊司氏は「愛着障害 子ども時代を引きずる人々」の中で、発達障害という診断を受けている人の半数は愛着障害ではないかと述べておられました。そもそも自閉症が先天的な障害なら、今どき遺伝子の特定ができないのも私は疑問ですし。スペクトラムとして一括りにしていいの?とか、知的障害は別問題では?とか、本質的には個性では?とか疑問符だらけになってしまいます。

あるいは、愛着障害だと薬を処方して稼げないけど、発達障害なら薬漬けにして稼げるといった社会的な要因も絡むと思います。さらには、ワクチンや魚食などで水銀が3〜4世代に渡って蓄積された影響もあるのではないかと勘ぐっているのですが。自閉症には詳しくないので、今度探求してみます。

NHKは時間が長いので、余裕のある時に見てみます。あのキャスターは好きではないのですが(笑)・・・
2015-06-16 20:37 : 清水賢一 URL : 編集
No title
誘惑理論とは、ヒステリーの原因が、幼児期に大人から受けた抑圧された性的虐待(大人からの性的誘惑)であるとするもので、後にフロイトはこの理論を放棄します。性的虐待の記憶は実際にあったことではなく幼児性欲に基づく空想であるとする衝動理論に転向します。
誤解があるようなので。
2015-06-16 13:27 : URL : 編集
Re: 「抱きぐせ」について
こんにちは。お返事有難うございます。

>ほぼ駆逐されたのではないでしょうか。

現在では、おそらくそうだと思います。
しかし、問題は、先に引用した漫画が連載されていた、1960年代後半以降のしばらくの間に生まれた人かもしれない、と思うことがあります。あくまでも可能性の話であり、推測の域を出ませんが。
なぜかというと、ですが、
5月25日朝のNHKで、「どう向き合う?夫の発達障害」という番組がありました。
(現時点では一般の動画サイトで視聴できるようです)
ここに登場する「発達障害と診断された夫」の年代が、先述の「1960年代後半以降のしばらくの間に生まれた人」
とほぼ重なるように思えるのです。
もちろん、これより上の世代は、発達障害があってもほとんどが見過ごされていたでしょうし、これより下の世代は、比較的若いうちに診断や治療がなされているのかもしれません。
あと、これは私の考えですが、「発達障害は、脳の器質的異常に起因するが、これに影響を与える要因として、乳児期の母子関係は無視できないのではないか」と思います。
簡潔にいうなら、「『抱きぐせ』といわゆる『成人の発達障害』の間には、解明されていない関連性があるかもしれない。」
ということです。
もちろん「では、なぜ男性だけに多く発症する?」という反論はあるでしょうが。
2015-06-16 13:16 : ダメダメ管理人 URL : 編集
Re: 「抱きぐせ」について
「ダメダメ家庭の目次録」の管理人さん、こんにちは。

仰る通りですね。ただ、日本では「抱きぐせがつくから抱いてはいけない」という考えは、ほぼ駆逐されたのではないでしょうか。たぶん、産院などの指導でも身体的な接触を重視していると思います。私の経験でも、いくらでも抱っこしていると、1歳半〜2歳ぐらいで抱っこに満足した時は自分から降りていました。3〜4歳になっても1日に1回ぐらいは抱っこした方が良いでしょう。自分が大切にされているという感覚を擦り込む作業だと思うので、基本中の基本です。

「抱きぐせ」だと批判していたのは、団塊を中心とする世代ではないかと思います(間違っているかも?)。私の両親は、父が昭和6年で母が昭和12年の生まれです。戦前の教育や慣習で育っていますが、私の親類や同い年の友人などの子育てで「抱きぐせ」云々は聞いたことがなく、赤ちゃんが泣いたら抱っこするのは当然だと考えていました。

欧米では、抱きぐせを防ぐ意図なのかどうか不明ですが、乳児期から個室で寝かせると聞きますね。アリス・ミラーはそのあたりも含めて、子供を自立させようとして「闇教育」が広がったと考えているようです。宗教観や民族の慣習なども複雑に絡まっているとは思いますが、アフリカの比較的開発されていない地域にいる母親は、赤ちゃんをずっと抱っこしているような印象があります。抱かない子育ては、自分達が高等民族であると勘違いした欧米文化の産物かもしれません。でも、その欧米でも抱っこの効用は理解されてきているようです。

最近ちょっと気になるのはベビーカーですね。それほど負荷にならない6ヵ月〜1歳頃までは、移動時も抱っこやおんぶが理想だと思います。抱っこひもは活躍しているようなので良い傾向ですが、あまり早くからベビーカーに頼るのは疑問です。ただし、母親に対する周囲の協力が欠かせませんが。それと、凶悪事件を起こす少年の乳児期まで検証できると、何らかの発見があるのではないかと予想しています。
2015-06-16 09:25 : 清水賢一 URL : 編集
「抱きぐせ」について
こんにちは。
「ダメダメ家庭の目次録」の管理人です。

今日の記事を見て、「抱きぐせ」という言葉を思い出しました。
この言葉を私が初めて見たのは、幼少期に自宅に置いてあった、長谷川町子の漫画「いじわるばあさん」でした。主人公が孫を抱っこしようとすると、息子の妻が、「抱きぐせがつくと困ります!」と苦情を言う場面だったと記憶しています。

この漫画、1966年から1971年にかけて、週刊誌に連載されていたようです。「抱きぐせ」と言う言葉が、広く知られるようになったのも、この頃なのでしょう。
この言葉や思想が当時、どのような感覚を持って受け入れられていたかは不明ですが、仮に、「抱きぐせがつくから」ということで、泣いても放置されるような乳児が少なからずいたとすれば、どうなるか。

泣いても母親が対応しない。
→自分の要求にこたえてくれる人はいない。
→自分を守ってくれる人はいない。
→トラブルがあっても、自分の身は自分でまもらなければならない。
という感覚を、幼少期から身につけてしまうのではないでしょうか。
その結果、どうなるか。
自分の身を守ることばかり考えていると、自分の非を認めることもできず、社会生活でトラブルが多発するでしょう。
また、自分の心の痛みを無視され続けていると、他者の心の痛みにも鈍感になる。いわゆる「共感力に欠ける」状態。
これも社会生活でのトラブルのもとになるでしょう。

「抱きぐせ」については、もっと研究され、その結果が世の中に明らかになるべきだと思うのですが、私は総括された結果を知りません。よろしければ、ご紹介願えますでしょうか。
2015-06-15 16:09 : ダメダメ管理人 URL : 編集
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プロフィール

清水賢一

Author:清水賢一
境界性パーソナリティ障害・解離性同一性障害であるパートナーとの約7年間の生活を「ちゅーしても、いいよ 親の支配から生還した真由美の記録」として出版しました。私が彼女の心のトラブルに気付き、その原因が次第に明らかになり、 彼女が事態を受け入れていく実話です。様々な出来事がありましたが、現在では安定した状況となり、毎日問題なく過ごせています。私の経験を元に、機能不全家族の連鎖を絶って被害者が回復できるように提言します。

ちゅーしても、いいよ 親の支配から生還した真由美の記録 前編

ちゅーしても、いいよ 親の支配から生還した真由美の記録 後編

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