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心的外傷(トラウマ)と過誤記憶

ご存知の方も多いかもしれませんが、「なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白」という本が出版されています。著者は東小雪さんです。彼女はテレビ番組や雑誌などに実名で顔を出していますが、境界性パーソナリティ障害と思われる状況から、催眠療法を受けて回復したそうです。元タカラジェンヌのレズビアンというプロフィールにばかり焦点を当てられているように思いますが、「なかったことにしたくない」という真意を私達はもっと汲み取るべきでしょう。

清水賢一セレクトショップ/性的虐待:事例
「なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白」


アマゾンのカスタマーレビューを見ると、催眠療法による過誤記憶ではないかと指摘する方々がいるようです。アメリカのような過誤記憶論争が、20年以上遅れて日本でも巻き起こりそうな気配ですね。私は大歓迎です。東小雪さんや彼女のカウンセラーの岩本令子さんも、こうした攻撃を予期した上で出版されたことでしょう。私はその勇気を讃えます。

思い出した子供の頃の記憶は偽物であると主張する人々に問いたいが、エリザベス・ロフタスは幼少期の子供に数年〜十数年という長期間に渡る性虐待を行なって、20年〜30年後に記憶を保持しているかどうか実験したのでしょうか。成人に対して子供の頃の些細な出来事を問いかけたとしても、そんな記憶が曖昧なのは実験するまでもなく当たり前です。極限状況に置かれたわけでもない健康な成人を被験者として、何を立証できたというのでしょう。訴訟という証拠を必要とする闘いの場で勝訴しただけで、なぜ性虐待を「なかったこと」にできるのか、なぜ「偽りの記憶」だと断定できるのか論理的に説明してください。

私が体験した大人の中の子供とのコミュニケーションなんて奇想天外すぎて、回復した記憶を信じない勢力には創作以外の何ものでもないと批判されそうです。自分が体験したこともなく文字を読んだだけで、他者を批判するのはやめましょう。こうした勢力のせいで、日本では性虐待が少ないなどという間違った通説がまかり通り、被害を受けた子供や大人は誰にも訴えないのです。

実父や兄などの近親者が幼い娘や妹を強姦する事例は稀ではないと社会が認識しなければ、いつまで経っても被害はなくなりません。アメリカの信頼できる調査では、社会的な認識が広まって性虐待が減っていると確認されています。「なかったことにしたくない」という題名には、声をあげた人がいたにもかかわらず、社会から無視され続けている現状への怒りが含まれていると私は捉えています。

 
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2014-08-29 : 情緒的虐待/身体的虐待/性的虐待 : コメント : 6 :
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Re: どう猛な動物?
saiさん、こんにちは。ご存知でしたね、失礼いたしました。
文字起こしの機能もお教えいただきありがとうございました。

そもそもロフタスは、記憶なんて曖昧なものだという常識を知らないようで、そのせいで「虚偽記憶」という言葉を編み出していますね。私は子供の頃に観たディズニー映画「101匹わんちゃん」の中で、スパゲッティを食べて犬がキスするシーンがあったのだと記憶していました。しかし10年ほど前に、それは「わんわん物語」だと知りました。記憶なんてそんなものです。

また、陪審員制度の問題を記憶の問題にすり替えているし、一つの裁判に勝訴したから他の思い出した記憶もすべて虚偽であるという暴論を吐いています。さらには、虚偽記憶を植え付けたと誇らしげに主張していますが、人は迎合する生き物だということも知らないようです。社会の一定数の人々は、相手が期待している答えを自分の答えとして無意識に意思表示します。選挙に行くと答える割合が80〜90%なのに、実際の投票率は50〜60%です。

つまり、「記憶なんて当てにならないよね」という大前提があった上で、幼少期の出来事を思い出す場合があるというトラウマ記憶には何も答えていません。「猛犬」を「猛獣」にすり替えたのは彼女ではないとしても、猛犬と数年〜十数年にも及ぶ近親者の強姦を同等視したところで説得力はありません。本当に勘弁してほしい心理「科学者」です。

拙著を出版した後に、7歳の基本人格は主人格に吸収されました。7〜8歳以降の記憶しかないと言っていた主人格は、幼稚園の頃の出来事をいくつも思い出しています。基本人格は被虐待時には解離して、その記憶を持っていないので、穏やかな普通の記憶です。一方で、親族は近親姦があった事実を認めたようです。それは7〜8歳以降の出来事です。


それから、友田明美さんをご紹介いただき、ありがとうございました。特に、「お金というご褒美に脳が反応しない」という研究結果には、思い当たる部分があってドキッとしました。経済面での社会的損失に言及している識者は少ないと感じていますが、そうした面でも期待できますね。出版物を読んでみます。
2017-10-13 15:57 : 清水賢一 URL : 編集
どう猛な動物?
清水さん、こんばんは

ロフタスの講演、ありがとうございます。
実は、私もこの講演を観たことがあります。

ちなみに、清水さんが提示された動画で日本語字幕を出すことができます。YouTubeにある、高評価・低評価・共有等の並びの一番右側に点が3つ並んでいます。そこをクリックして「文字起こしを開く」を選んで下さい。

11:27に 「どう猛な動物に襲われたような」とでます。
ショッピングモールの迷子の実験に対しては、迷子など大したトラウマにはならない、と批判されたときロフタスが決まって持ち出す実験例です。

「ブリティッシュ・コロンビア大学にいたスティーブ・ポーターは約半数の被験者に猛獣に襲われたと思い込ませる事に成功したという事実もあると反論」とwikiの虚偽記憶の項目にあります。過誤記憶を知ったかで振り回す連中もきっとこう反論することでしょう。

私はずっとこの「もう獣」とは具体的になんのことだろうか?と思っていましたが、最近やっとその疑問が解消しました。

Tedには日本語以外に英語等各諸国語が出せる動画があります。そこで調べると「もう獣」は"a vicious animal"でした。辞典では"vicious animal"は犬にも使用されます。「猛犬注意」ですね。要するに「もう獣」はあきらかな誤訳なのです。

こんなことをされてはたまったものではありません。

普通の人は、迷子はトラウマにならなくとも、もう獣はトラウマになると勘違いしかねません。

芸脳人の存在にもうんざりなのですが、幸い日本にもまともな脳科学者がおられます。福井大学附属病因小児精神科医にして脳科学者である友田明美さんです。これもTEDですが、以下の動画をご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=4TkL1N-EThU
2017-10-12 22:52 : sai URL : 編集
Re: No title
saiさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

過誤記憶だという主張は、ヒトに備わっている解離という防衛システムを全否定しているんですよね。解離症状(現象)については膨大な証拠があるにもかかわらず。なるほど、解離を思想として語るなら「生存へのひたむきな努力」だと受け取れます。

ロフタスは世界的講演会「TED Conference」でも講演していますが、そもそも条件付けが成立していない実験であるにもかかわらず、それが科学だと誤解している人が大勢いるのだと思います。例えるなら、毎日暴力を振るわれて身体中骨折していた人を除外して、一度も骨折したことがない人に健康診断を行い、人類はすべて健康であると主張しているようなものです。

ロフタスの講演は以下にあります。
https://www.youtube.com/watch?v=PB2OegI6wvI
(以前NHKで放送された時は字幕が付いていたので、NHKアーカイブスに行けば翻訳を読めるかもしれません)

日本でも、頻繁にテレビに出ている自称脳科学者(芸脳人)が、なんの脈絡もなく「脳科学的には……」としたり顔でコメントしている状況に辟易とします。脳細胞がどのように分裂し、摂取した分子がどのように取り込まれ、合成され、移動しているのか、厳密な数値とともに証明するのが科学です。つまり、主観が入り込む余地のない客観的な指標がない限り、何も証明されたことにはなりません。
2017-10-11 13:27 : 清水賢一 URL : 編集
No title
清水様

ご無沙汰しています。
あれ以来、過誤記憶なる概念を良くも知らずに振り回す輩につける薬を探してみました。

ロフタスの「抑圧された記憶という神話」も読んでみましたが、読み手によってどうとでも取れる内容で、一言では論評できません。いずれにせよ彼らはロフタスの本も読んではいないでしょうが。それだけの知的能力も好奇心も彼らにはないでしょう。

私が前回引用した、ベッセルファンデアコルク博士の本から再び引用します。

「児童虐待のじつに多くのサバイバーと同じで、マリリン(コルク博士の患者)は生命力、すなわち、生きて自分の人生を支配する意志や、トラウマの破壊的な力に対抗するエネルギーを体現している。私は徐々に気づくようになった。トラウマを癒す仕事を可能にしているものは一つしかない。それは畏敬の念だ。患者が虐待に耐え、それから回復への道のりにはつきものの魂の暗闇にも耐えることを可能にした、生存へのひたむきな努力に対する畏敬の念なのだ。」

これだけで十分ではないでしょうか。
2017-10-11 01:06 : sai URL : 編集
Re: エリザベスロフタスの誤謬
saiさん、補足をありがとうございます。

世界的には過誤記憶は論破されているのですが、性虐待に関して時代遅れの日本には知ったかぶりたい輩が多いようです。というか、近親姦の加害者がやたらと否定しようとしているようにも見えます。

ジュディス・ハーマンは臨床例に基づいて過誤記憶の可能性を具体的に2〜7パーセントと記述していますが、そういう輩は学説さえ勉強していないのでしょう。記憶をなくすなんて、余程の出来事がない限りできません。
2017-09-11 22:01 : 清水賢一 URL : 編集
エリザベスロフタスの誤謬
エリザベスロフタスの研究には致命的な欠陥があります。彼女はエピソード記憶とトラウマ記憶の違いを認識していません。

PTSD研究の第一人者、ベッセル・ファン・デア・コルク博士の著書「身体はトラウマを記録する」から引用します。参考になれば幸いです。

トラウマ体験の記憶喪失と遅延想起は研究室で実証されていないので、認知学者のなかには、そのような現象が存在することや、想起したトラウマ記憶が正確でありうることを断固否定した人がいる。とはいえ、医師が救急処理室や精神科の病棟、戦場で出会うものは、科学者が安全で整理整頓が行き届いた研究室で観察するものとは必然的に全く異なる。

たとえば、「ショッピングモールで迷子」実験として知られているものを考えてほしい。アメリカの研究者たちは、子供のころにショッピングモールで迷子びばるといった、実際には起こらなかった出来事の記憶を植えつけるのが比較的容易であることを示した。こうした研究の参加者の約25パーセントが、のちに、自分がおびえたことを「思い出し」、抜け落ちていた詳細を埋めさえする。だが、そのような記憶には、迷子の子供が実際に経験するような、体の芯からの恐怖をいっさい伴わない。
「身体はトラウマを記録する」p.317
これが最新(2015年)の知見です。

2017-09-08 01:25 : sai URL : 編集
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プロフィール

清水賢一

Author:清水賢一
境界性パーソナリティ障害・解離性同一性障害であるパートナーとの約7年間の生活を「ちゅーしても、いいよ 親の支配から生還した真由美の記録」として出版しました。私が彼女の心のトラブルに気付き、その原因が次第に明らかになり、 彼女が事態を受け入れていく実話です。様々な出来事がありましたが、現在では安定した状況となり、毎日問題なく過ごせています。私の経験を元に、機能不全家族の連鎖を絶って被害者が回復できるように提言します。

ちゅーしても、いいよ 親の支配から生還した真由美の記録 前編

ちゅーしても、いいよ 親の支配から生還した真由美の記録 後編

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