FC2ブログ

性的虐待・近親姦の基礎知識-3/代償

ジュディス・L・ハーマン氏は、「父-娘 近親姦『家族』の闇を照らす」の序章の最後で「実際、そういう父親は、本来無条件で与えられるべき愛情と養育を娘の身体で支払うことを強制している。そうすることで彼は親子の間の保護というつながりを壊し、娘を売春へと向かわせる性格づけを行なっている」と述べています。私はこの文章にハッとしました。

性的虐待や近親姦の被害に遭っていた女性には、不特定多数とのセックスや性風俗産業での従事、売春といった性的逸脱行為がしばしば見られます。性被害に対するC-PTSDの反応として、被害を矮小化したり、加害者である男を支配したり、自分は汚れていないと確認したりするのだと私は理解しています。しかし、そもそも父親などから強制的に代償を支払わされていたわけで、そこが出発点だったのです。

だから、被害を受けた子供は、性的な関わりの健全なモデルを持てず、何かを得るためにセックスするのは当然だという認知の歪みを生じさせます。また、そこには「断れない」という拘束も加わります。断ったら酷い目に遭う。断ったら愛情を得られない。断ったら生きていけない。そう感じた子供は、相手を怒らせないように、相手の望みに先回りして対処する行動様式を身に付けます。つまり、子供がセックスを望んでいるように見えたとしても、それは不安や恐怖に支配された強要となります。性的虐待・近親姦とは、極めて残酷な無意識の擦り込みに他なりません。

 
スポンサーサイト



2016-07-29 : 情緒的虐待/身体的虐待/性的虐待 : コメント : 0 :

性的虐待・近親姦の基礎知識-2/隠蔽

ジュディス・L・ハーマン氏は、「父-娘 近親姦『家族』の闇を照らす」の序文で「近親姦というテーマは大事に胸に温めておくようなテーマではない。それは、たまたまぶつかってしまって、ぶつかってしまったからには頑張って展開していかなければならないテーマなのだ」と述べています。私も同じ考えです。私は、自ら望んで解離性同一性障害とされるパートナーを選んだわけではないし、機能不全家族や精神医療に興味があったわけでもありません。ただ、自分の身に起きた出来事を掘り下げたら、社会から隠された真実を知ってしまい、被害者の回復に貢献するしかなくなっただけです。

ところが、精神分析学者のジグムント・フロイト氏は正反対でした。100年前に、現在の境界性パーソナリティ障害に相当するヒステリー症状は、娘が父親を誘惑するという作り話に由来し、それが典型的なエディプス・コンプレックスの表現であると論じました。要するに、父親に強姦されたという娘の話を信じてはいけないと触れ回ったのです。何ということでしょうか。せっかく発見した真実を自己保身のために隠蔽しただけではなく、その悪影響によって後世の精神科医まで真実を認めなくなりました。

このエディプス・コンプレックス理論は現在でも幅を利かせています。さもわかった風な精神科医やカウンセラーには、難解な理屈を捏ねて専門家っぽく振る舞うために都合が良いのでしょう。あるいは、こうした風説の流布は、ポルノ産業にとっても有り難いバックボーンとなっているはずです。しかし、根拠がない上に、性的虐待や近親姦を否定する意図で捏造された理論です。子供には安全な環境と無条件の愛情が与えられなければなりません。全ての責任は大人にあり、子供に責任転嫁するエディプス・コンプレックス理論は完全な間違いです。

 
2016-07-27 : 情緒的虐待/身体的虐待/性的虐待 : コメント : 2 :

性的虐待・近親姦の基礎知識-1/発見

ハーバード大学教授で精神科医のジュディス・L・ハーマン氏(Judith Lewis Herman)が1981年に出版した「Father-Daughter Incest」という本があります。近親姦を「再発見」した彼女が、近親姦の実態を広く世に知らしめた著作です。過去の膨大な文献を検証するとともに被害者の調査を行ない、この問題が闇に葬られてきた歴史的経緯に踏み込んで、父親が娘を強姦するという事実を社会に突きつけています。

ハーマン氏の著作は1994年に出版された「Trauma and Recovery」が有名ですが、その13年も前に証拠を積み上げて、父親が娘を強姦する事例は稀ではないと立証していました。日本では「Trauma and Recovery」を翻訳した「心的外傷と回復」(中井久夫訳)が1996年に出版され、「Father-Daughter Incest」を翻訳した「父-娘 近親姦『家族』の闇を照らす」(斉藤学訳)が2000年に出版されています。つまり、「Father-Daughter Incest」は20年も経ってから日本に輸入されたわけですが、私はその時間差がそのまま日本の精神医療の未熟さに繋がっていると考えています。

多くの精神科医やカウンセラーは、乳幼児期から少年期の虐待によって心的外傷が生じ、思春期以降に様々な症状や言動として表現されるという人の仕組みを真に理解していません。性的虐待が広く存在し、心身に重大な後遺症をもたらすと知っている精神科医やカウンセラーは少数派です。それでも、近年の日本では、近親姦の被害者が声を上げ始めました。もう、沈黙しなくてもいい社会に変わりつつあるのです。心的外傷の回復は、負の感情を言葉に置き換えることから始まります。

 
2016-07-25 : 情緒的虐待/身体的虐待/性的虐待 : コメント : 0 :

性暴力、近親姦に取り組んだ映画「月光」

「月光」という映画が現在公開されています。性暴力、近親姦をテーマとして取り組んで制作されているようです。興行として見ればヒットするはずのない映画だと思いますが、クラウドファンディングなども活用して完成に至っています。小澤雅人監督は、前作「風切羽~かざきりば~」で児童養護施設を取材した際に、子ども達の多くが性的虐待を受けていた事実を知りショックを受けたそうです。

劇場公開映画「月光」

性暴力を描いた映画『月光』、男性監督が作品に込めた思いとは(治部れんげ/次世代中心主義)

過去には、近親者間の性行為を興味本位で美化した小説や映画が数多く存在しましたが、ようやく日本でも真実に目を向けた作品が現れました。この映画はレイプ被害の実態をとてもリアルに再現することで、フィクションだからこそできる凝縮した主張となっているのでしょう。

一昨日のNHK朝7時のニュースでこの映画について放送していましたが、扱いにくい題材を取り上げた番組を評価したいと思います。ただし、ピアノ教師を強姦した男が娘にも性的虐待を行なっていたという内容には触れていません。こうした「見て見ないふり」こそが被害者の沈黙に繋がると認識して欲しいものです。「月光」は被害者の回復には直接的に貢献しないとしても、新たな被害を少しでも防ぐ方向に社会を動かす力があるはずです。

 
2016-07-08 : 情緒的虐待/身体的虐待/性的虐待 : コメント : 0 :

里親や養子縁組が置き去りになっている改正児童福祉法

急増する児童虐待への対応を強める改正児童福祉法が成立しました。虐待に関する通告や相談にきめ細かく対応できる体制の整備を図るそうです。また、妊娠・出産・子育てのワンストップ相談窓口「子育て世代包括支援センター」の開設を推進するようですが、すでに施設で育っている子供の里親や養子縁組が置き去りにされています。そうした点をロイターが報じていました。

改正児童福祉法は施設暮らしの子どもを救えるか(DIAMOND online)

国やマスコミは児童虐待をやたらと取り上げる反面、乳児期からの養育の重要性についてはおざなりになっていると感じます。生殖医療が発展して、大金を投じて妊活に励む夫婦が大勢いるのに、親が見つからない子供は4万人もいるのです。「自分だけを可愛がってくれる人がどうしても必要になってくる」、「乳児院はいたずらに長く(子どもを)置いておきたいとは、これっぽっちも思っていない」という二葉乳児院の都留和光院長の話には現場の苛立ちが現れています。

 
2016-07-06 : 結婚・育児 : コメント : 0 :

NHKハートネットTV「密かに産まれる命 女子刑務所 ー出産・育児は…ー」

毎年20人ほどの赤ちゃんが刑務所に服役中の母親から産まれています。そうした場合でも昔は刑務所内での育児が認められていましたが、近年ではほぼ皆無になっている状況だそうです。子供の権利という視点で親子を引き離さないようにする処遇の検討が始まっていると、NHK Eテレ ハートネットTVで放送していました。

密かに産まれる命 女子刑務所 ー出産・育児は…ー(NHK)
2016年7月6日(水)13時05分~13時35分に再放送予定

そもそも、受刑者の多くは機能不全家族に育っていたり、虐待やDV、性暴力などの被害を受けていたりします。出産した子供だけではなく、その母親も含めてケアできる態勢にならないと、その子供に健全な環境を提供できません。番組に出演されていた方々は、そうした基本的な養育を十分に理解されているようでしたが、その知見が現場に反映されるように望みます。

ところで、昏睡強盗事件の神いっき被告(声優のアイコ)は拘置中に出産したようですが、子供とは引き離されてしまったという話がありました。精神鑑定後に裁判が開かれたという報道はありませんが、彼女の状況が心配です。拘置中の被告であっても、子供の権利を重視して養育環境が与えられるべきです。産まれた子供から母親を取り上げる権利は誰にもありません。

 
2016-07-04 : 結婚・育児 : コメント : 0 :

「かまってちゃん」に対する一般的な理解

愛着障害を抱え、ストーカーに発展したパーソナリティ障害と思われる女性について、行政書士の方が事例を紹介していました。ここに書かれている内容は事実だろうと思いますが、彼女は「二重人格」ではないし、復讐していたわけでもありません。

DV加害の濡れ衣で逮捕!
別れを拒むモンスター彼女の恐怖の罠
(DIAMOND online)

この女性の行為を成人女性として受け取れば、確かに常軌を逸したまとわりつき方です。しかし、この女性の行為を幼児が行なったと捉えれば、特におかしな点はありません。「先に寝ないでね」、「私を一人にしないでね」と甘え、悪い子を演じて試し行為を繰り返すイヤイヤ期を生きていただけです。予備知識のない交際相手にそこまで理解しろと言うつもりはありませんが、こうして「かまってちゃん」と蔑視するだけでは機能不全家族の連鎖はなくなりません。

 
2016-07-01 : 境界性パーソナリティ障害/境界性人格障害(BPD) : コメント : 0 :
ホーム

プロフィール

清水賢一

Author:清水賢一
境界性パーソナリティ障害・解離性同一性障害であるパートナーとの約7年間の生活を「ちゅーしても、いいよ 親の支配から生還した真由美の記録」として出版しました。私が彼女の心のトラブルに気付き、その原因が次第に明らかになり、 彼女が事態を受け入れていく実話です。様々な出来事がありましたが、現在では安定した状況となり、毎日問題なく過ごせています。私の経験を元に、機能不全家族の連鎖を絶って被害者が回復できるように提言します。

カレンダー

06 | 2016/07 | 08
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

推薦図書

アルバム

にほんブログ村

にほんブログ村 メンタルヘルスブログへ にほんブログ村 家族ブログ 家庭崩壊・機能不全家族へ にほんブログ村 メンタルヘルスブログ アダルトチルドレンへ にほんブログ村 メンタルヘルスブログ 解離性障害(解離性同一性障害など)へ

人気ブログランキング